甘鯛の下処理
現在お世話になっている船宿で、唯一未体験だった釣りものが甘鯛だ。
今シーズン、遂に甘鯛釣りに参戦を始めた。寒い時期の釣行で、釣り場は風や波の激しい湾口になる。状況は決して楽なものではない。しかも、やっとの思いで釣り上げた甘鯛の下処理は今まで手にした魚の中で最高難度と言えるレベルだった。
だが…苦労の末に味わった甘鯛は、まさに「高級魚」の名にふさわしいものだった。
釣り上げた甘鯛のポテンシャルを引き出すための下処理方法について、備忘を兼ねて投稿する。
目次
1.Checkpoint
今まで釣った甘鯛は小さいもので20cm、最大54cmとサイズにはバラツキがある。
だが、サイズに関係なく共通しているポイントがある。それは、ヌメリが非常に強いこと。そして、身は非常に柔らかいのにウロコや骨が非常に硬いことだ。詳細は、下表を参考にして欲しい。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | Checkpoint | 特徴 |
1 | 危険部位 | 背びれ前部がやや硬く、鋭い。他は特に問題なし |
2 | ヌメリ | ヌメリが非常に強い。ヌメリ取りは必須 |
3 | ウロコ | 非常に硬く、大きい。身離れも悪い。すき引きがベストか? |
4 | 皮 | 厚く、硬め。特に大型の場合はよく切れる包丁が必須 |
5 | 骨 | 真鯛より硬い。関節を狙って切る必要がある |
6 | 身質 | 非常に柔らかい。丁寧な処理必須 |
7 | 特記事項等 | 下処理時は軍手必須 |
※このテーブルは右にスクロールする。
一言で言えば、処理が非常に難しい魚だ。
ヌメリが強く骨が硬いので、包丁を使う作業は危険度が高い。包丁を持たない方の手には軍手をはめて下処理するのが良いだろう。
2.下処理工程
下処理工程は下表の通り。
我が家では刺身や昆布締めなどの生食がメインなので、熟成用の工程を選択している。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | 工程 | 特記事項等 |
1 | ヌメリ取り | 塩でよく揉み、歯ブラシ等を使い丁寧にヌメリを取る |
2 | 究極の血抜き(ホースのみ) | |
3 | エラ・内臓の除去 | エラを除去する際には注意が必要(後述) |
4 | 脱水/寝かせ | 余計な水分とドリッブを除去 |
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今まで散々触れてきた通り、かなり危険な魚なので細心の注意を払いながら作業を行う。
下処理工程上の注意点を列挙しておく。
2-1.ヌメリ取り
ヌメリ取りの方法は上に記した通りだが、1回では取り切れず2回目でようやくヌメリが取れた(単に私が下手なだけかもしれないが…)。そのくらい強烈なヌメリを持っている魚なので、処理は丁寧に行うべきだ。
なお、作業品質とスピードとを両立させるには手作業ではなくブラシの使用がベスト。塩を揉み込んだ後にスチールたわしや歯ブラシ等を使い、優しく表面をこすれば綺麗にヌメリが取れるはずだ。
2-2.エラの除去
甘鯛のエラを除去する際に注意すべき点は、エラぶたがカマの付け根をすっぽりと覆っているので、頭とエラのつなぎ目に包丁が入りにくいこと。当然、視認性も悪いので無理に切り離そうとすると怪我の恐れがある。
なので、まずはエラをカマから切り離す。エラの上部(背側)から包丁を入れ、カマ下まで切り進める。カマとエラとが分離したら、先にカマ下を頭から切り離して包丁が入るスペースを確保。その後エラを頭から切り落とす。
熟成用の場合はこれで下処理完了。食べる時まで冷蔵庫で寝かせておけばOKだ。
3.ウロコ取り
甘鯛の下処理工程で最大の難関は、ウロコ取りだ。
甘鯛のウロコは大きく、硬い。しかも皮目にガッチリと食い込んでいる。
手荒な処理ではウロコどころか皮まで剥がれ、身がボロボロになってしまう。しかし、身がボロボロになるのを気にして恐る恐る処理してもウロコは取れない。実に困った魚だ。
出刃包丁、スチールたわし、ウロコ取りと色々試してみたのだが、最も綺麗にウロコが取れたのは「すき引き」だった。ひれの際など細かいところは出刃包丁も併用してウロコを取り去る。手戻りが無いので、作業時間的に見てもすき引きがベストだと思う。
上の写真は、すき引きに初挑戦した時の1枚。
背びれ側と胸びれの付け根に一部表皮が残っているが、ウロコは綺麗に取り去ることが出来た。
甘鯛の皮は単体でも料理に使える。皮つきの湯霜造りで刺身を食べたり、昆布締めにしたりというのは定番だが、皮を湯引きしたり炙って食べても絶品だ。甘鯛の皮を堪能するためにも、ウロコはキッチリ除去したい。
3.総括
甘鯛というのは、とにかく下処理が難しい魚だ。
ヌメリが強く、ウロコや皮、骨が硬いのでとにかく安全面には最大限の注意を払うべきだと思う。
また、包丁は事前に良く研いでおくべきだ。切れない包丁では骨も身も上手く切れない。無理に切ろうとすると身はぐちゃぐちゃになる。それだけなら未だ良いが、大怪我の原因にもなる。
本当に手間が掛かるけれども、そうした苦労が全て吹っ飛ぶくらいに美味しい魚だ。
機会があれば、是非挑戦してみて欲しい。