関孫六 銀寿ST・刺身210mm(左利き用)使用記録①
この投稿は、貝印の「関孫六 銀寿ST 刺身包丁210mm」を使用した結果をまとめたものだ。あくまで一例に過ぎないが、本商品を検討している方の参考になれば幸いだ。
目次
テストの概要
銀寿STの刺身包丁(以下、「柳刃」と表記)を使い、鯵49匹、イシモチ4匹、カワハギ13匹、タチウオ2匹を実際にさばいてみた。
自家消費用なので、全てを一度に捌いた訳ではない。今回は9回に分けて作業を行った。詳細は下に記入しておくが、いちいち見る必要のない人がほとんどだろう。なので先に概要を記しておく。
なお、包丁のメンテナンスに使う砥石はシャプトン「刃の黒幕」(中砥#1500/仕上げ砥#5000)、面直し用の砥石は中砥がスエヒロ修正砥石WA300 (中~仕上砥石修正用)、仕上げ砥は貝印コンビ砥石の中砥(#1000)を使用した。
作業内容、及び数量
対象は先述の通り、鯵49匹、イシモチ4匹、カワハギ13匹、タチウオ2匹だ。
柳刃包丁を使った作業内容(工程)は下表の通り。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | 作業内容 | 数量 | |||
鯵 | イシモチ | カワハギ | 太刀魚 | ||
1 | 皮引き(峰ごき)※1 | 49匹 | 4匹 | ||
2 | 皮引き(薄皮除去)※2 | 18匹 | |||
3 | 皮への切れ込み | 2匹 | |||
4 | 血合い骨除去 | 49匹 | 4匹 | ||
5 | 叩き作成 | 15匹 | |||
6 | 刺身引き | 8匹 | 2匹 | 18匹 | 2匹 |
※1:峰ごきとは、包丁の峰を使って皮を引く方法。よって刃にダメージを与えることは無い。
※2:カワハギは、薄皮除去の際に併せて血合い骨も除去。
切れ味/長切れチェック
作業開始時点から終了時までの切れ味の変化や刃欠け/刃こぼれの有無を以下に記す。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | Checkpoint | 結果 |
1 | 作業回数 | 9回 |
2 | 切れ止みの有無 | 無し |
3 | 刃欠け/刃こぼれ | 無し |
4 | 作業中断(切れ止みによる研ぎ直し等) | 無し |
5 | 研ぎ直し回数 | 5回 |
テストの総括/アクションプラン
刃欠け/刃こぼれ等、リカバリーに多くの時間を要する深刻なトラブルは発生しなかった。
キチンと研げていれば、切れ止みによる作業中断も発生しない。単に身を切っている分には普通に切れる包丁と言える。
但し、気になる点が2つほどあった。1つ目は、身離れが悪いこと。そして2つ目は、研ぎ方が難しいことだ。その根本的な原因は、鎬筋や裏を感じられない包丁だからだと思っている(個人的には、鎬筋も裏も無いと思っている)。
素人に出来る改善策は、銀寿STに合った研ぎ方を知り、実践することしかないと思う。
もっと具体的に言えば、切れ味が維持出来る刃角を把握すること。そして研ぐ際にはその刃角を維持して研ぐことだ。
なお、各作業の詳細に興味があるなら、下記も併せてご覧頂きたい。
テスト1回目(鯵とイシモチの処理・新品状態)
初回なので、いわゆる「箱出し」の状態で鯵の処理を行った。詳細は下表の通り。
作業内容、及び数量
対象は先述の通り、鯵とイシモチ。大きさは鯵が20cm前後、イシモチが30cm前後だ。
皮引きと血合い骨の除去が柳刃のメインパート。その後は状況に応じて叩きの作成や刺身を引くのに使用した。
(叩きは家人が別の包丁で処理することが多いので、皮引きや血合い骨除去した数に比べて少ない)
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | 作業内容 | 数量 | |
鯵 | イシモチ | ||
1 | 皮引き(峰ごき) | 49匹 | 4匹 |
2 | 血合い骨除去 | 49匹 | 4匹 |
3 | 叩き作成(鯵) | 15匹 | 0匹 |
4 | 刺身引き | 8匹 | 2匹 |
上の数値は、計4回の作業の合算値(内訳は10匹/15匹/18匹/10匹)。
切れ味/長切れチェック
作業開始時点から終了時までの切れ味の変化や刃欠け/刃こぼれの有無を以下に記す。ちなみに、箱出し段階での切れ味は「普通」。のこぎり引きすることなく、一発で刺身が引けるレベルの切れ味だ。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | Checkpoint | 結果 |
1 | 切れ味の変化 | 特に感じない |
2 | 刃欠け/刃こぼれ | 無し |
3 | 作業中断 | 無し |
4 | 作業後の処理 | 無し |
出刃包丁のように骨を切断することがないせいか、上の表で示した数を研ぎ直すことなく全てさばき切れた。もちろん、刃欠け/刃こぼれ等のトラブルも無かった。
もっとも、鯵もイシモチも身は適度な硬さがあり切り易い魚だ。そのため、切れ味の微妙な変化に気付かなかった可能性はある。いずれにせよ、今回のテストではノートラブルだった。
テスト2回目(カワハギの処理)
砥石を新調(シャプトン「刃の黒幕」を購入)したので、中砥#1500→仕上げ砥#5000で研いでからカワハギの処理を行った。詳細は下表の通り。
作業内容、及び数量
対象は先述の通り、体長15cm~30cmのカワハギ。
腹骨をすき取った卸身の血合い骨の両脇から包丁を入れ、血合い骨を除去しつつ薄皮を引いて柵取りを行う。そして出来上がった柵を薄造りにするという作業を行った。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | 作業内容 | 数量(カワハギ) |
1 | 薄皮&血合い骨除去 | 18匹 |
2 | 刺身引き | 18匹 |
上の数値は、計4回の作業の合算値(内訳は5匹/5匹/3匹/5匹)。
切れ味/長切れチェック
作業開始時点から終了時までの切れ味の変化や刃欠け/刃こぼれの有無を以下に記す。
no. | Checkpoint | 結果 |
1 | 切れ味の変化 | 特に感じない |
2 | 刃欠け/刃こぼれ | 無し |
3 | 作業中断 | 無し |
4 | 作業後の処理 | 無し |
鯵やイシモチの時と同様、カワハギの処理でも魚を切ったことによる切れ止みは発生しなかった。刃欠け/刃こぼれ等のトラブルもなかった。
長切れ/切れ味と直接的には関係ないが、包丁からの身離れが悪いように感じた。これは、銀寿STの裏が感じられない(私的には無いと思っている)ことと関係があるように思う。
左利き用の包丁でそぎ切りや薄造りを引くと、引いた刺身は裏に乗る。裏すきがある方が身離れは良いと言うが、確かにそうだと思う。引いた刺身が裏にくっついてしまいがちだったからだ。
テスト3回目(太刀魚の処理)
カワハギ釣りに行った際、船宿から指5本サイズの立派な太刀魚を頂いた。ちょうど良い機会だったので、銀寿STを使ってさばいてみた。詳細は下表の通り。
作業内容、及び数量
対象は先述の通り、指5本サイズ(体長は80cm~90cm)の太刀魚。
タチしゃぶ、及び炙り用に腹骨をすき取った卸身の皮に切り込みを入れ、そぎ造りに引くという作業を行った。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | 作業内容 | 数量(太刀魚) |
1 | 皮への切れ込み | 2匹 |
2 | 刺身引き | 2匹 |
上の数値は、計2回の作業の合算値(内訳は1匹/1匹)。
切れ味/長切れチェック
作業開始時点から終了時までの切れ味の変化や刃欠け/刃こぼれの有無を以下に記す。
※このテーブルは右にスクロールする。
no. | Checkpoint | 結果 |
1 | 切れ味の変化 | 最初から皮が切れない |
2 | 刃欠け/刃こぼれ | 無し |
3 | 作業中断 | 1回(包丁を交換) |
4 | 作業後の処理 | 研ぎ直し |
今までノートラブルで来ていたが、太刀魚の刺身引きで初めてトラブル発生。皮が全く切れず、急遽金寿STで作業をこなすこととなった。原因は、包丁がキチンと研げていなかったこと。研ぎ直して2回目のテストで使用した際には問題なく切れたからだ。
一度包丁を研ぐとなれば、全体にカエリが出るまで研いではいる。だが、皮付きの卸身は刺身に出来なかった。自分で初めて銀寿STを研いだあとに行った作業はカワハギの処理だが、その時には感じられなかった切れ味の甘さ(研ぎの甘さ)がハッキリと分かった。逆に言えば皮付きの刺身をスムーズに引ければ、一定以上の切れ味をキープしていると言っても良いのかもしれない。
テストの総括とアクションプラン
左利き用の柳刃包丁を初めて使った感想は出刃と一緒。利き手に合った包丁を使えばさばきやすく・仕上がりも良くなることを実感出来た。正直、刺身を引くのは苦手だったが、練習すれば更に「速く・綺麗に」刺身が引けるという実感が湧いた。
但し、手放しで喜べる状態ではないことも分かった(これも出刃と同じ)。
今後の課題、及びアクションプランは下記の通りだ。
今後の課題
身離れを良く、研ぎやすく出来れば…というのが目に見える課題なのだが、銀寿STは裏すきや鎬筋が感じられない包丁だ。構造上の問題は、素人ユーザーが解決出来るものではない。
よって実践可能な対策は、銀寿STに合った研ぎ方を見つけ・実践すること。もっと具体的に言えば下記2点が直近の課題となる。
①ベストな刃角を見つけること
②研ぐ際に、ベストな刃角を維持すること
アクションプラン
課題をクリアするために必要なことは、ベストな刃角を可視化して記録することだ。
切れ味の良い状態の包丁の刃角を把握していれば、研ぎで悩むことも無い。感覚だけでなく数値にも頼れるからだ。
よって角度計を購入し、ベストな刃角を探ることから始めてみようと思う。